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5,000万円の仕事を断った、私より若い社長。私は自分の営業を恥ずかしく思った

執筆者の写真: 柴田義治
柴田義治
9月21日
読了時間: 4分

更新日:9月24日

5,000万円の仕事が、目の前にある。

それを、そのまま受けない。

その判断を聞いたとき、私は耳を疑いました。

しかも、断った社長は私より若い、30代前半でした。

当時の私は、自分の会社の売上が欲しくてたまりませんでした。

だから正直に言えば、最初に感じたのは尊敬ではありません。

「5,000万円の仕事があるなんて、うらやましい」

そう思いました。

会社にとって、5,000万円は決して小さな数字ではありません。

それを断るなんて……。

私には、すぐには理解できませんでした。

顧客の要望に応えることが、価値だと思っていた

当時、私はシステム開発会社を経営していました。

お客様からシステム開発や改修の相談を受けたら、要望を丁寧に聞く。

要件を整理し、予算とスケジュールを詰め、きちんと形にする。

それが誠実な仕事であり、お客様に対する価値だと思っていました。

もちろん、依頼された仕事を正確にやり切ることは大切です。

今も、その考えは変わりません。

ただ、当時の私は、その一歩手前にある問いを十分に持てていませんでした。

「そもそも、このシステム改修は本当に必要なのか」

「お客様が解決すべき本当の課題は、別のところにあるのではないか」

そこまで踏み込んで考えられていなかったのです。

私より若い社長は、受注することを目的にしなかった

その先進的なシステム会社は、大手企業から約5,000万円規模のシステム改修を相談されていました。

私は、その会議に同席していました。

ところが、その会社は依頼内容をそのまま受注しようとはしませんでした。

話を聞き、調べ、考えた結果、

この改修をそのまま実行しても、本質的な課題は解決しない。企業価値の向上にも十分につながらない

と判断したのです。

そして、限られた予算を別の経営課題へ振り向けた方が、その会社の未来につながるのではないかと考え、依頼されたものとは違う仮説を提示しました。

目の前に5,000万円の仕事がある。

受注すれば、自社にとって大きな売上になる。

それでも、

「頼まれたから作る」のではなく、「この投資は本当にお客様のためになるのか」

と問い直したのです。

私は衝撃を受けました。

そして、少し時間がたってから、自分の営業を恥ずかしく思いました。

自分は、売ることばかり考えていなかったか

私は、お客様の要望を一生懸命に聞いていました。

提案書も一生懸命に作っていました。

期待に応えるため、社員と必死に考えていました。

しかし振り返ると、問いの出発点が、

「どうすれば、この仕事を受注できるか」

になっていたこともあります。

お客様が欲しいと言ったものを、より良く、より早く、適正な価格で届ける。

そこまでは考えていました。

しかし、

お客様が欲しいものと、お客様のためになるものは、必ずしも同じではありません。

外部の人間だからこそ、社内では当たり前になっている前提を疑うことができる。

依頼された仕事をそのまま受けるのではなく、その奥にある本当の課題を見つける。

必要であれば、目の前の売上を失う可能性があっても、耳の痛いことを伝える。

そこまでやって、初めて本当の提案になるのだと思い知らされました。

AI時代になっても、最後に問われるもの

今は生成AIを使えば、業界動向を調べたり、複数の仮説を短時間で広げたりできます。

提案の材料を集める力は、以前より格段に大きくなりました。

しかし、最後に問われるものは変わらないと思います。

自社の売上より、お客様の未来を優先できるか。

依頼されたことを鵜呑みにせず、本当に必要なことを考えられるか。

正解が見えない中でも、自分の責任で仮説を出せるか。

AIは仮説を広げてくれます。

しかし、目の前の売上を手放してでもお客様のために意見を言う覚悟まで、代わりに持ってくれるわけではありません。

あのときの私は、5,000万円という数字がうらやましくてたまりませんでした。

だからこそ、その仕事をそのまま受けず、別の提案をした私より若い社長の姿が、今も頭から離れません。

あの会議で教えられたのは、営業のテクニックではありません。

仕事に向き合う姿勢そのものだったのだと思います。

今の自分は、目の前の依頼に応える前に、

「本当に解くべき課題は何か」

と問い直せているか。

今も、そう自分に問い続けています。

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執筆者


柴田義治(経営実行支援株式会社 代表取締役)

みずほ銀行で11年、上場子会社の代表取締役・CFO・営業本部長などを経験。銀行、不動産、IT、通信販売、冷凍食品、建設土木、介護の7業界で、M&A7件、企業再生、新規事業の実務に携わる。現在は社長の右腕として、計画づくりだけでなく現場実行まで支援している。


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