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新規事業を「今の仕事への上乗せ」にしてはいけない――目的・役割・期待を先に伝える

執筆者の写真: 柴田義治
柴田義治
9月18日
読了時間: 4分

更新日:9月19日

新規事業で最初に決めるのは、予算ではありません。担当者でもありません。経営者が「なぜ、この事業をやるのか」を、自分の言葉で語れるかどうかです。


目的が曖昧なまま「新規事業もお願い」と仕事だけを渡せば、担当者には既存業務の上に新しい負担が増えます。日常業務に追われて進まない。経営側は「なぜ動かないのか」と不満を持つ。これでは、誰もハッピーになりません。


私は銀行、不動産、IT、通信販売、冷凍食品、建設土木、介護という異なる業界で、経営や新規事業に関わってきました。その中で強く感じるのは、新規事業が止まる原因は、アイデア不足よりも「目的と役割が腹落ちしていないこと」だという点です。


新規事業は「仕事を増やす話」ではなく、「会社の未来を一緒につくる話」として渡さなければ、人は動きません。

経営者が先に腹を決める


担当者に覚悟を求める前に、まず経営者が腹を決めます。少なくとも、次の4点は経営者自身が説明できなければなりません。


  • なぜ今、この新規事業をやるのか

  • やらなければ、会社は将来どうなるのか

  • 成功すれば、会社・顧客・担当者にどんな未来が生まれるのか

  • 経営者自身が何を支え、何を守るのか


「売上を増やしたい」だけでは、人は腹落ちしません。既存市場が縮んでいるのか、顧客の困りごとが変わったのか、社員が挑戦できる会社をつくりたいのか。会社の事情と目指す未来を、飾らずに話すことです。


経営者自身が説明できない新規事業を、現場が自分事として動かすのは難しい。立派な企画書より先に、経営者の言葉が必要です。


「上乗せ」するなら、きちんと合意する


中小企業では、初日から専任者を置けるとは限りません。既存業務に少し上乗せして、小さく始めること自体は現実的です。上乗せを受け入れ、挑戦したい人に任せるのもよいと思います。


ただし、本人が納得しないまま仕事だけを載せてはいけません。追加業務ではなく、会社の未来をつくる役割として渡し、その意味と条件を合意します。


悪い任せ方:「通常業務はそのままで、この新規事業もよろしく」


良い任せ方:「会社の次の柱をつくるために、あなたには顧客の声を集める役割を任せたい。既存業務との優先順位と使える時間は一緒に決める」


良い任せ方には、目的、本人を選んだ理由、役割、優先順位、経営が支える姿勢が入っています。


  • なぜ、あなたに頼むのか

  • 既存業務とどちらを優先するのか

  • どれだけの時間と権限を渡すのか

  • 最初の期限までに何を期待するのか


負担だけが増え、評価や権限が変わらなければ、やる気は続きません。売上だけでなく、挑戦した事実や得られた学びも、きちんと評価する必要があります。


役割と期待は、短い言葉で決める


「新規事業の責任者にする」だけでは、役割を決めたことになりません。誰が何を決め、何を実行し、何を経営へ報告するのかを分けます。


  • 経営者:目的と優先順位を示し、障害を取り除き、継続・修正・中止を決める

  • 責任者:日々の判断と進行を担い、必要な支援を経営へ求める

  • 顧客担当:顧客の声を集め、仮説が正しいかを確かめる

  • 商品担当:試作品やサービスをつくり、改善する

  • 管理担当:費用、採算、期限、進捗を見えるようにする


会社によっては、一人が複数の役割を兼ねても構いません。大切なのは、担当者一人ひとりが「自分は何を担い、何を期待されているか」を一文で言えることです。


動機づけは「やれ」ではなく「一緒につくる」


本当の動機づけは、熱い言葉をかけることだけではありません。自分の仕事が会社の未来とどうつながり、この挑戦が自分の経験や成長にどうつながるのかを理解できることです。


さらに経営側は、「失敗したら担当者の責任」にしてはいけません。小さく試した結果、仮説が違うと分かったことも成果です。経営者が責任を引き受け、担当者が安心して事実を報告できる状態をつくります。


誰もハッピーにならない新規事業をつくらない


目的が曖昧、既存業務は減らない、役割も期待も不明確。その状態で新規事業を始めると、担当者は疲れ、経営者はいら立ち、既存事業まで弱ります。


  • 予算の前に、目的を伝える

  • 人を付ける前に、役割を決める

  • 結果を求める前に、期待を合意する


新規事業のスタートは企画書ではありません。経営者が「なぜやるのか」を語り、担当者が「自分は何を担うのか」に腹落ちした瞬間です。

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執筆者


柴田義治(経営実行支援株式会社 代表取締役)

みずほ銀行で11年、上場子会社の代表取締役・CFO・営業本部長などを経験。銀行、不動産、IT、通信販売、冷凍食品、建設土木、介護の7業界で、M&A7件、企業再生、新規事業の実務に携わる。現在は社長の右腕として、計画づくりだけでなく現場実行まで支援している。


新規事業を現場で動かす体制をつくるために


新規事業を既存業務に上乗せせず、目的、担当者の役割、使える時間や予算、検証の順番を整理することが実行の土台になります。構想から顧客検証、社内の役割設計、営業実行まで一緒に進めます。



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