top of page

新規事業はどこから始めるべきか?アンゾフの成長マトリクスとAI「50本ノック」

執筆者の写真: 柴田義治
柴田義治
9月14日
読了時間: 5分

更新日:9月19日

既存事業の市場が縮小し、「新しい売上をつくらなければならない」と感じている経営者は少なくありません。しかし、社内には新規事業を考える人も時間も足りない。そこでAIに「新規事業を考えて」と頼んでも、自社で本当に実行できる案はなかなか出てきません。


新規事業は、何もないところから奇抜なアイデアを探す仕事ではありません。まず自社の強みを整理し、商品、市場、顧客、技術、販売網を掛け合わせ、仮説を増やして検証する仕事です。今回は、その入口をアンゾフの成長マトリクスとAI活用から考えます。


新規事業は「ゼロ」ではなく、既存事業の強みから始める


私は新規事業を考えるとき、最初に「この会社は何が強いのか」を確認します。商品そのものだけではありません。長年の取引関係、販売網、製造技術、仕入れ力、顧客データ、現場の知識、会社への信頼も立派な経営資源です。


既存事業の強みを磨き、その強みに市場・顧客・技術・売り方を掛け合わせる。

強みが曖昧なまま流行の商品へ飛びつくと、競合との差がなくなります。逆に、自社がすでに持っている強みを起点にすれば、新しい挑戦でも「なぜ自社がやるのか」を説明できます。


アンゾフの成長マトリクスで、挑戦の位置を確認する


新規事業を整理するときに分かりやすいのが、アンゾフの成長マトリクスです。「商品」と「市場」を、それぞれ既存と新規に分けて4つの方向を考えます。


アンゾフの成長マトリックス。既存商品・新規商品と既存市場・新規市場を組み合わせた4象限の新規事業戦略図

図:アンゾフの成長マトリックス。既存の強みを起点に、まずは隣の領域で小さく検証する。



  • 既存商品×既存市場:今の市場でシェアや利用頻度を高める「市場浸透」

  • 既存商品×新規市場:地域、年代、業界、海外など新しい顧客へ広げる「新市場開拓」

  • 新商品×既存市場:既存顧客の新しい課題に応える「新商品開発」

  • 新商品×新規市場:商品も顧客も新しくする「多角化」


この4象限に置くだけで、今考えている案が、どの程度未知の領域へ踏み込むものかが見えます。すべてを同じ「新規事業」として扱わず、リスクと必要なリソースを分けて考えることが大切です。


最初に取り組みやすいのは、片方が「既存」の領域


比較的取り組みやすいのは、「既存商品を新しい市場へ持っていく」か、「既存市場へ新しい商品を投入する」方法です。どちらか一方に、すでに知識や顧客接点があるからです。


例えば、法人向けの商品を個人向けに変える、若年層向けの商品を高齢者向けに再設計する、国内商品を海外市場へ持っていく。あるいは、既存顧客から繰り返し聞く困りごとに対して、新しいサービスを開発する。こうした案は、今の強みと新しい機会の間に接点があります。


「新商品×新市場」は、最も慎重に考える


新しい商品を、知らない市場で売る多角化は、最も難易度が高い領域です。商品知識も顧客理解もなく、販売方法も分からない。計画が外れたときに、どこを修正すべきかさえ判断できないことがあります。


不足する商品や市場をM&Aで買う方法もあります。ただし、知らない業種や市場の会社を買えば、それは修正の利きにくい大きな買い物になります。分かる人材が社内にいるのか、買収後に誰が経営するのかまで含めて判断しなければなりません。


AIは「答え」ではなく、掛け算を増やす装置


AIの強みは、1つの正解を当てることではなく、人だけでは見落としやすい組み合わせを短時間で大量に出せることです。ただし、「何か新規事業を考えて」と頼むだけでは、どの会社にも当てはまる案になりがちです。


AIへ渡すべきなのは、自社固有の材料です。


  • 既存商品・サービスと、その本当の強み

  • 既存顧客と販売網

  • 現場で繰り返し聞く困りごと

  • 保有する技術、原料、データ、許認可

  • 使える人員、予算、期間

  • 参入したくない領域や守るべき条件


これらを入れたうえで、顧客層、用途、原料、販売方法、提携先などの軸を変えながら掛け算を繰り返します。AIは、新規事業の代わりに責任を持ってくれる存在ではありません。経営者と現場が考える範囲を広げる補助者です。


私は毎日「新規ネタ50本ノック」をする


私は複数の会社の新規事業支援で、毎日「新規ネタ50本ノック」を行っています。最初から50本すべてを事業化するためではありません。案を出す量と速度を上げ、比較できる状態をつくるためです。


今は複数のAIエージェントを動かし、24時間アイデアや市場情報を検討している企業や個人もいます。AIを使うこと自体は、すでに差別化ではありません。自社の情報を正しく与え、出てきた案を現場で検証し、意思決定の速度を上げるところまでやって初めて競争力になります。


50案を出すことより、検証して絞ることが重要


新規事業に絶対勝てる保証はありません。だからこそ、最初から完成品をつくり込まず、小さく試し、顧客の反応を見て修正します。問い合わせ、商談、試作品の評価、継続意向などを確認し、反応のある案へ人とお金を集中させます。


考え続けて時間だけが過ぎることも、新しい案を無計画に乱発することも避けなければなりません。重要なのは、「強みを整理する→仮説を増やす→小さく試す→数字と顧客の声で絞る」という仕組みを会社の中につくることです。


次回は「誰といくらを張るのか」を考える


アイデアと市場を選んでも、責任者、人員、予算、期間が決まらなければ新規事業は動きません。次回は、人員・コスト・資金をどの段階で投入し、継続・修正・撤退をどう判断するかを取り上げます。


経営実行支援株式会社では、既存事業の強みの棚卸しから、新規事業の仮説づくり、検証、営業設計、事業化まで、社長の右腕として一緒に実行します。



関連記事




執筆者


柴田義治(経営実行支援株式会社 代表取締役)

みずほ銀行で11年、上場子会社の代表取締役・CFO・営業本部長などを経験。銀行、不動産、IT、通信販売、冷凍食品、建設土木、介護の7業界で、M&A7件、企業再生、新規事業の実務に携わる。現在は社長の右腕として、計画づくりだけでなく現場実行まで支援している。


新規事業の仮説を検証し、事業化へ進めるために


新規事業のアイデアを増やした後は、自社の強みや顧客の課題と照らし合わせ、小さく検証して優先順位を決めます。経営実行支援株式会社では、仮説づくりから検証、営業設計、事業化まで現場で伴走します。



最新記事

すべて表示
AI導入でビジネスを最適化する方法

中小企業がAIを導入するときに重要なのは、ツール選びより業務のどこに使うかです。生成AIによる業務効率化と経営DXの進め方を解説します。

 
 
bottom of page