第1回【企業再生相談室】会社を売りたい。でも赤字、債務超過で売れない…。
更新日:2 日前

~企業再生で一番難しいのは、お金ではなく「決断」です~
会社を売りたいと考えても、赤字、債務超過の状態ではM&A会社から「難しい」と言われ、途方に暮れる経営者は少なくありません。資金繰りは厳しく、金融機関への返済も計画通りに進まず、スポンサー企業を探したいけれど何から始めればよいか分からない。そんな悩みを抱えながらも、社員や家族の前では平然を装う経営者の姿を、企業再生の現場では何度も見てきました。
このブログでは、都市銀行で企業再生・不良債権業務を担当し、その後もM&AやPMI、企業再生の現場に携わってきた経験をもとに、企業再生の本質と経営者が直面する「決断」の難しさについてお伝えします。
企業再生で一番難しいのは「決断」
企業再生の現場で最も難しいのは、実はお金の問題ではありません。多くの人が資金繰りや債務の問題に目を向けがちですが、最も重い壁は経営者の「決断」です。
48億円の不良債権案件で学んだこと
私が都市銀行で担当した約48億円規模の不良債権処理案件では、会社の資金繰りはすでに破綻し、借入金の返済は不可能な状況でした。金融機関としても対応を決める必要がありましたが、案件はなかなか進みませんでした。
理由は財務状況ではなく、社長が決断できなかったことにありました。社長だけでなく家族や親族も連帯保証人となっており、事業再生や債権処理を進めれば一族全体に影響が及ぶ可能性がありました。さらに債権者は複数存在し、それぞれの立場や考え方も異なっていました。
社長にとって「会社を守る」決断は「家族に負担をかける」決断でもあり、動けなかったのです。この経験から、企業再生は財務や法律だけの問題ではなく、人生や家族の問題でもあることを痛感しました。
赤字、債務超過だからといって会社は終わりではない
債務超過の事実は重いものですが、それだけで会社が終わるわけではありません。スポンサー企業が注目するのは決算書だけではありません。
例えば、以下のような数字では表せない価値があります。
長年築いてきた取引先との信頼関係
優秀な従業員の存在
技術やノウハウ
地域でのブランド力
将来性のある事業内容
こうした価値に魅力を感じ、事業承継やスポンサー型の事業再生につながるケースも多くあります。つまり、「債務超過だから売れない」のではなく、「会社の価値が正しく伝わっていない」ことが原因の場合も少なくありません。
一人で抱え込むほど選択肢は減っていく
経営者は責任感が強いほど、一人で悩みを抱え込みがちです。
社員に知られたくない
家族に心配をかけたくない
銀行に相談したら終わりだと思う
こうした気持ちは理解できますが、時間が経つほど資金繰りは厳しくなり、選べる道は狭まっていきます。企業再生は早い段階で相談するほど、選択肢が増えます。これは多くの現場で見てきた事実です。
私たちがお手伝いできること
企業再生は一人で進められるものではありません。金融機関との調整、スポンサー企業との協議、事業価値の整理、再生スキームの検討など、多くの専門家が関わるプロジェクトです。
私たちは経営者の想いを丁寧に伺い、現状を整理し、必要に応じて専門家と連携しながら、一つひとつ課題を前に進めるお手伝いをしています。
まだ依頼を決めていない段階でも
まずは現状を整理したいだけでも
構いません。企業再生の第一歩は正解を出すことではなく、選択肢を整理することだと考えています。
あの48億円案件から学んだこと
あの案件は今でも忘れられません。会社を救う方法を考えることも大切ですが、それ以上に経営者が安心して決断できる環境をつくることが重要でした。
企業再生はお金を動かす仕事ではなく、人の人生と向き合う仕事です。経営者の決断を支えるために、私たちは寄り添い続けます。
次回予告
次回は「銀行には、いつ、何を相談すればいいのか?」をテーマにお届けします。銀行は本当に敵なのでしょうか。元都市銀行・企業再生担当の視点から、金融機関が何を考え、何を見ているのか、現場の経験を交えてお伝えします。
企業再生は難しい決断の連続ですが、決して一人で抱え込む必要はありません。まずは現状を整理し、選択肢を増やすことから始めましょう。あなたの会社の価値は、数字だけでは測れません。未来を見据えた一歩を踏み出してください。
この記事の執筆・監修
柴田 義治(経営実行支援株式会社 代表取締役)
元メガバンク出身。不動産、IT、製造、介護など7つの業界で代表・役員等を歴任。48億円規模の企業再生や7件のM&A実行・PMIなど、修羅場での現場伴走型支援を強みとする。



